弁護士 秋山 努
Q 最近、新聞、雑誌やネットの記事でクレジット、サラ金、商工ローン業者から「過払金」を取り戻すことができると言われていますが、本当でしょうか。本当であれば、どのようにすれば取り戻すことができますか。
A 従来、クレジット・サラ金・商工ローン業者の貸金取引の利率は、平成19年12月の法改正の頃まで、大手業者でも年利20数%程度に設定されていました。しかし、利息制限法の制限利率は15〜20%とされています(貸付元本10万未満なら20%、10万以上〜100万円未満は18%、100万円以上は15%)。そこで、法的には強制的に15〜20%の利率に引き下げて借入残金を主張でき、15〜20%の利率で計算し直すと、実は、貸付元本はすでに支払い済みであったのに返済を続けていた計算になった、という現象が生じることがあります。このような返済金が「過払金」となり、借主は業者から取り戻すことができます。
このような事態が生じているのは、従前、業者は貸金業規制法の「みなし弁済」規定の適用によって15〜20%の利率以上を取っても「グレーゾーン」金利で許されると主張していたところ、平成16〜18年頃にかけて出た最高裁判例では、こうした主張はほとんど否定されたという経緯があります。つまり、裁判で法的な争いにほぼ決着がついたので、過払金の存在が露わになったのです。
現在、過払金の発生は珍しい事態ではなく、債務整理を試みると、むしろ幾らかの過払金が発見できる方が多いとすら言えます。弁護士の債務整理実務では、まず過払金につき調査・回収することが不可欠となっており、過払金が回収できると、必要な費用や債務の弁済原資に充てることができるので、債務者に経済的負担の少ない形で債務整理ができることになります。
実際のところ、合計で数百万円の負債を抱え「自己破産しかない」と思い詰めていた人の依頼を受けたところ、逆に数百万円の過払金を回収することができた、という極端な例もあります。こうした例は、実は少なくないのです。
以上のとおり、さまざまな記事で報道されていることは、ちょっと信じられない印象を持つと思いますが、事実です。クレジット・サラ金・商工ローン業者と長く取引をしてきた方は、過払金の回収を検討されることをお勧めします。
もっとも、長く取引していたからと言って、必ず過払金が発生しているとは限りません。おおむね、通算で5〜7年程度の取引で過払いとなる例が多いですが、実際には借主ごとの借入及び返済額の推移、利率、返済方法などによって異なります。これは、それぞれの借主の長い履歴を利息制限法の計算ソフトに入力して、初めて判明します。
そこで、過払金が発生しているかどうかを明らかにするには、借入及び返済の金額、日時を特定する必要がありますが、借主は一般に、古い借用証や領収証、振込明細などの資料を捨ててしまっており、手元にないことが多いでしょう。そのため、過払金を計算するためにはまず、業者に対して取引履歴を要求する必要があります。
平成17年に出た最高裁判例で、業者は借主に取引履歴を開示する義務があるとされましたが、未だに、様々な理由をつけて開示をごまかそうとする業者もみられます。また、何とか取引履歴を開示させても、過払金の計算方法が分からなかったり、様々な抗弁を主張されたりして、十分に取り戻せない例があるようです。しかし、業者の主張する抗弁は裁判例で否定され、訴訟では全く通用しないものもたくさんあるのです。
以上より、過払金を取り戻すためには、弁護士などの法律専門家に相談されるのが無難だと思われます。
以上